【膝】関節可動域(ROM)ってどう考える?
膝の関節可動域エクササイズ(ROMex)をやったことないPTはいないと思います。
この記事はROMexについてを考えること、そのための膝の知識の振り返り作業をおこなっていきます!
膝関節について
膝関節は下肢の真ん中の関節で主に体重を支える役割があります。
また、
体重を支持するための安定性を保持しながら大きい可動域を有する。
と言われており、膝の役割は立位・歩行を主とする人間にとって重要であることが分かります。
さらに、
隣接関節からの影響も大きく、大腿部と下腿部の動きを調整する役割も有する。
膝関節可動性が損なわれると移動を主体とした日常生活に不利益を被る。
引用:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/18/3/18_3_135/_pdf/-char/ja
この言葉からも、膝の可動域の重要性は伝わりますよね。
ここからもいくつかの文献を参考にさせて頂きながら、なぜ重要なのか考えていきましょう。
ガイドラインから見る徒手療法について
続いて、ROMexは徒手で(他動で)行っていますか?
自動で患者さんに行ってもらっていますか?
ここでは膝関節疾患の保存的治療でのROMex、観血的治療後のROMexについてまとめていきます。
理学療法介入の推奨グレードとエビデンスレベル
引用:理学療法ガイドライン
<保存的治療>
・ストレッチングおよび関節可動域運動・
推奨グレードC エビデンスレベル2
膝OA群へのストレッチにより関節可動域、歩行速度、歩行時の膝関節角度の改善があった。
※関節可動域のみの記載はなし。
・徒手療法・
推奨グレードB エビデンスレベル2
大腿四頭筋の筋力増強に加えて徒手療法を行うと筋力増強のみと同様に筋力向上した。
関節位置覚と移動能力は徒手療法のみで改善した。
※どのような徒手療法かは不明。
8週間のスウェーデン式マッサージではWOMAC得点が改善した。
※WOMAC:薬物療法の臨床評価で得点が高いほどQOLが低い
※機能面というよりは心理面に効果がある
ガイドラインからも、「これをやると良くなる」という手技や方法は確立されていないということが分かります。
続いて、観血的治療後のROMexをまとめます。
<観血的治療後>
・自動運動:推奨グレードA エビデンスレベル2・
・他動運動:推奨グレードD エビデンスレベル2・
理学療法士による他動運動の有意性は認められなかった。
理学療法士は膝関節の他動運動よりも、日常生活活動に着目した機能運動に積極的に関わる方が好ましい。
TKA後のCPM、スライダーボードを用いた関節可動域運動は、通常の理学療法と比較して、更なる効果は認められなかった。
※悲しい現実です。
エビデンスとしてはこんな感じになってます。
もちろんエビデンスが全てではないですし、徒手により改善を経験した方も多くいらっしゃるはずです。
なので、どこをどうしたら良くなるか、解剖の知識が不可欠なんですね。
PTなら自分の手で良くしたいと思うのも当然あるでしょう。
膝関節「伸展」
正常可動域:0°
膝伸展筋:大腿四頭筋
膝蓋骨:伸展に伴い上方へ移動
膝蓋下脂肪体:柔軟に変形 前方に押し出される
膝蓋上嚢:二重膜構造となる
前十字靭帯(ACL):前内側線維束ー弛緩、後外側線維束ー緊張
後十字靭帯(PCL):前外側束ー弛緩、後内側束ー緊張
内側側副靱帯(MCL):緊張
外側側副靱帯(LCL):緊張
他の筋肉:ハムストリングス伸張、腓腹筋伸張、薄筋伸張、縫工筋伸張
膝伸展位では大腿筋膜張筋が伸展作用をもたらす
膝関節「屈曲」
正常可動域:130°
膝屈曲筋:ハムストリングス(内側:半腱様筋、半膜様筋 外側:大腿二頭筋)
膝蓋骨:屈曲に伴い下方へ移動
膝蓋下脂肪体:柔軟に変形 後方に押し込まれる
膝蓋上嚢:単膜構造となる
前十字靭帯(ACL):前内側線維束ー緊張、後外側線維束ー弛緩
後十字靭帯(PCL):前外側束ー緊張、後内側束ー弛緩
内側側副靱帯(MCL):弛緩
外側側副靱帯(LCL):弛緩
他の筋肉:大腿四頭筋伸張
膝屈曲位では大腿筋膜張筋は屈曲作用をもたらす
屈曲制限には皮膚や屈曲筋の筋緊張亢進などが要因となることが多い
屈伸するにもこれだけの組織が関わっているということ。
これを覚えておきましょう。
ADLを支障なく遂行するためには膝関節には0°から120°のROMが必要
参考:齋藤宏ら 臨床運動学 医師歯薬出版 2002
膝関節のROMex
膝のROMexを行うにあたり、膝の関節運動特に関節内運動を理解しておきましょう。
膝関節の運動
大腿脛骨関節(FT関節):屈曲ー内旋、伸展ー外旋
膝蓋大腿関節(PF関節):屈曲ー下方、伸展ー上方
と、このように骨が動いていることを想像しながら動かしていくことが重要です。
roll back機能
膝の屈曲に伴い、大腿骨は脛骨上を転がります。
脛骨は内側は凹面、外速は凸面となっています。
よって、内側は滑り運動が主な働き、外側は転がりが主な働きとなる、つまり外側が後方にroll backするという特徴があります。
ピボットはこの動きです↑🏀笑
Screw-home movent
次にScrew-home movement(SHB)があります。
分かりやすいイラストをTwitterで見つけたのでシェアさせて頂きます。
合わせて昨日の修正版もご確認ください🙇🏻♂️#スクリューホームムーブメント#修正版#参考可動域角度#イラスト日記 pic.twitter.com/iUC14gLqSB
— ユジカワ@整形Dr✖️イラストレーター (@yujikawa32) September 3, 2021
roll backは屈曲での話でしたが、SHBは伸展に伴って起こる関節内運動のことをさします。
特に最大伸展位に近いところ(伸展−15°くらいから0°の間)で起こる現象です。
①大腿骨内側顆の形状
②ACLの緊張
③大腿四頭筋の外側への牽引
これらが協調的に働くことでスムーズな関節内運動が起こります。
ここまで、ざっくりですが膝関節の運動学を復習しました。
患者さんに説明するにもここを理解しておくと良いと思います。
ROMexの実際
ここからは様々な文献をもとに、ROMexの意義、より良い方法についてをまとめていきたいと思います。
高強度な他動ROM練習は不必要であり、患者に苦痛を強いない自動介助訓練を含めた愛護的なROM訓練は有用である。
理学療法士の行うROM訓練として、
・80%以上のものが5〜10分以内の訓練時間で膝屈伸の回数は20〜30回行っていた。
・他動ROM終了の目安は、痛みなどの局所反応(36%)、目標角度(22%)などがあった。
・ROM制限の要因を動的に分析することに意義がある。
・徒手によるROM訓練をartとして高めていくことも大きな議題である。
私の経験から、ROMは時と場合により効果的か否かが変わることがありました。
文献を読ませていただく中で、可動域制限の要因の追及は最重要課題であり、徒手での介入はその次の段階であることを改めて認識しました。
あまり臨床的な根拠も得られていないのに
私たちが他動ROM訓練をする意味って
・・・?と
考え続けていきたいなと思います。
私の持論ですが、他動での関わりにも意味をなしているなと思ったことは何度もあります。
例えば、
・ROM制限の追求:場所の特定、組織の状態把握
→介入 膝蓋骨のROM、周囲軟部組織のモビライゼーション、緊張亢進筋のマッサージ
・防御性筋収縮の改善
→介入 触圧覚の入力
・膝ROMの正常アライメントでの活動
→介入 SHMの誘導、脛骨前後引き出しの介助
などです。
方法は自分の手の大きさな力にも関与してきますが、体の置き方などの工夫により誰でも実施可能です。
他動ROMを真っ向から否定するのではなく、使い分けていくことで効率良く機能改善していきたいですね。
まとめ
・他動ROMはエビデンスレベルとしては低い
・観血的治療後は自動介助ROMの方が有用とされている
・ROM制限因子の追求に尽力すべき
・制限の要因に応じて他動ROMを行うことは有用
・他動ROMを行うメリット、デメリットをもっと解明していきたい
ありがとうございました٩( 'ω' )و